この記事では「はじめて知能検査(WISC・WAIS)を取る」「久しぶりに発達検査を取る」「心理検査はまだまだ初心者…」といった人向けに、検査の取り方や所見の書き方について学べる本をまとめます。
筆者は現在心理職として働いていますが、実習ではじめてWISCを取った時や所見を書くときに役に立ったおすすめの本を紹介します。
WISCだけでなく、WAISや他の検査を取るときにも活用できる本も多々あるので、心理検査について学びたい人はぜひチェックしてみてください。
また、この記事は公認心理師・臨床心理士といった心理専門職の方、または心理専門職を目指している学生や心理系大学院生を対象に書いた記事です。
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準備~検査当日におすすめ
まずは、「これからWISCを取ることになったけど、なにから準備したらいい?」「当日の流れはどうする?」「声掛けの方法やタイミングは?」といった疑問を解消できる本を紹介します。
また、当日の流れや声掛けの細かい点は、ケースによって異なるため、SVの先生と十分に打合せから臨むことをおすすめします。
心理職は検査中に何を考えているのか?
おすすめ度:★★★
はじめて心理検査をする人全員におすすめしたい本です。
心理検査を実施する前の情報収集で注目するポイントから、当日の実施時の流れや声掛け、所見作成・フィードバックまで、心理検査を実施するときに必要となる知識や流れが網羅的に書かれています。
また、事例ではThとClの会話と、Thの頭の中の思考が同時に書かれているため、具体的にイメージがしやすい本となっています。
この本では、成人のClを対象に、WAIS・バウムテスト・P-Fスタディ・ロールシャッハテストの4つの検査の取り方が書かれています。
特にWAISの下位検査の解釈や観察ポイントが充実しているため、WISCの実施にもかなり応用できます。
大学院の後輩に「はじめてWISCを取るんですけど、いい参考書はありますか?」と聞かれたときに、「まず読むならこれだよ!」と強くお勧めした本です。
子どもの発達検査の取り方・活かし方
おすすめ度:★★★
子どもの発達検査を取るときに直面する課題に対する解決法が解説されている本です。WISCを中心に、下位検査別に、陥りやすい困難事例やその時の対応・声掛けのアイデアや考え方を学ぶことができます。
「制限時間を過ぎても回答を続けているとき、どう対応する?」「検査前にどうやって子どもや親とやりとりする?」といった観点からも解説されているため、当日までのイメージトレーニングにも活用できます。具体的な声掛けの方法が書かれているため、初学者にとってはかなり参考になる1冊です。(私もかなり助けられています)
また、検査道具の鉛筆の削り方や形などの細かい点にも言及されており、心理検査をより様々な視点から考えるきっかけにもなると思います。
新版K式とMSPAについても少し言及されているため、WISC・新版K式・MSPAに取り組む人の参考になる本だと思います。
セラピストのための子どもの発達ガイドブック
おすすめ度:★★★
0歳~12歳の年齢別に、子どもの発達を脳・身体・性・認知・情緒・アイデンティティなどの側面から解説している本です。
心理検査を実施する前に、クライエントの年齢を確認し、「〇歳の子の健常発達だと、これくらいの発達段階にあるのか~」とイメージしてから検査に臨んでいました。
主訴や当日の観察と合わせて、アセスメントをする時に非常に役立ちます。
年齢別・項目別にまとめられているため、必要な時に必要な範囲だけ、簡単に探して読めるのもおすすめポイントです。
プレイセラピーや行動観察など、心理検査以外でも子どもと関わる臨床をしている人は手元に1冊持っておくと、子どもの発達への理解が深まるかと思います。
これらの本は、どれも活用できる場面が多いのでおすすめです。
大学院生のときだけでなく、心理職として働き始めた今も、職場の机に置いてあり、必要な時に繰り返し読んでいます。
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フィードバック・所見作成におすすめ
続いて、心理検査を実施したあとの解釈・所見作成・フィードバック面接などで役に立つ本を紹介します。
心理検査のフィードバック
おすすめ度:★★★
子ども向けの心理検査のフィードバックに焦点を当てた本です。
子ども・保護者・担任・特別支援コーディネーターなど、フィードバックする対象に合わせた実際の事例や逐語を読むことができます。
また、所見も、保護者用と子ども(本人)用の例が複数掲載されているため、所見を作成するときにも「こんな表現をすればいいのか!」と参考になります。
WISCやK-ABCを中心に、幼稚園児~大学生までのフィードバック7事例が掲載されています。テストバッテリーを含めると、田中ビネー知能検査Ⅴやバウムテスト、URAWSSⅡ、成人ADHD検査などについても言及されており、幅広い検査におけるフィードバックを学べます。
個人的には、第8章の「説明のための用語集」がすごく参考になりました。心理検査には専門用語がたくさん出てきますが、クライアントや保護者・関係者に分かりやすい言葉で説明するためのヒントが詰め込まれています。
はじめて心理検査のフィードバックをする時は、第8章に書いてある内容をかなり参考にした記憶があります。
「知能」「信頼区間」「標準得点」「IQ」「CHC理論」といった検査の基本用語から、WISCにおける「言語理解指標(VCI)」「ワーキングメモリー指標(WMI)」、KABC-Ⅱにおける「認知総合尺度」「継次尺度」「同時尺度」「計画尺度」などの説明に難しさを感じている人は読んで損がない1冊だと思います。
心理検査を支援に繋ぐフィードバック
おすすめ度:★★
医療や教育など、様々な領域・年齢における8つの事例が紹介されています。
また、チーム医療やチーム学校のなかでの心理検査が依頼される場面から検査の活用法・クライエントへの伝達方法・フィードバック場面での会話などが書かれており、仕事をする時の心理検査の活用のされ方をイメージできる本です。各事例における職場内での心理職の立ち位置や組織構造も書かれているため、就職した後に「こんな風に仕事をするのかな」とイメージすることもできます。
また、8つの事例に対して、ベテラン臨床家が検討を加えているページもあり、より多角的に事例について学ぶことができます。
「心理検査はどのように活用されるのだろう?」「何のために検査を取って、どうやったらクライエントのためになるのだろう?」といった疑問も事例を通して得られるものがあると思います。
第1章には、問いかけの具体例などが書かれているため、心理検査の実施やフィードバック前に第1章だけでも目を通しておくと勉強になります。
日本版WISC-Ⅳによる発達障害のアセスメント 代表的な指標パターンの解釈と事例紹介
おすすめ度:★★
WISCの指標パターン別に解釈のヒントや活かしたい強さ・補いたい弱さ・支援の例が書かれている本です。
初心者の場合、指標得点が出た後に、「さて、どうやって解釈しよう…?」「何から書き始めたらいいの…?」とフリーズした場面があるかもしれません。(私はそうでした)
この本には、VCI・PRI・WMI・PSIの指標の高低別に強さや弱さ、支援例が書かれています。もちろん、本人の主訴などに合った所見を作成する必要がありますが、「何から解釈したらわからない」という人にとって、パターン別のプロフィール解説はかなり参考になると思います。
この本は書店に置いてない場合が多いので、インターネットで購入することをおすすめします。
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まとめ
今回は、心理検査の取り方や所見を書くとき、フィードバックに役に立った本を紹介しました。
どの本も筆者が実際に購入して、繰り返し読んでいる本です。心理検査の勉強に役立てばうれしいです。
また、筆者が読んでよかった本はこちらの記事でも紹介しています。
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