最終更新日:2024年8月7日
投稿日:2023年3月31日
この記事では、仕事を退職して大学院(修士課程)へ進学した筆者の感想やメリット・デメリット、お金事情、キャリアなどについて書きます。
筆者は理系の4年制大学を卒業し、専門職として就職・働いた後、仕事を辞めて心理学の勉強をするために大学院へ進学しました。
専攻の大きな変更(理系から文系へ)、キャリアの大幅な変更(理系専門職から心理専門職へ)が伴い、自身のライフプランに関しても大きな影響がありました。
執筆時点では、修士課程の1年目が終了するタイミングですが、現時点では思い切って仕事を退職して大学院へ進学してよかったと考えています。勉強が楽しいですし、24時間365日研究や勉強、実習に没頭できる環境は本当に貴重で充実しています。
とはいえ、1度仕事を辞めて大きなキャリアチェンジを目指すということは、リスクも伴います。時間もお金も必要です。
この記事ではあくまでも筆者の体験談をまとめているので(n=1)、全ての人や専攻に当てはまるとは限りませんが、大学院への進学を検討している人の参考になれば幸いです。
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キャリアの迷い
本当に退職して大学院へ進学するのか
「心理学の勉強をしたい」という気持ちが自分の中に出てきた後「心理学の勉強をする方法」を調べ、情報収集をしました。自分のやりたいことを考えたときに、「臨床心理士・公認心理師の資格を取得して、心理学の専門家として働きたい」という結論に至りました。臨床心理士や公認心理師の資格を取るためには、大学院へ行く必要があります。
最初は「仕事を続けながら大学院へ通えたら」と思っていましたが、大学院では実習や授業が平日昼間に行われるため、平日フルタイムの仕事を続けながら大学院へ通うのは難しいことが分かりました。
そこで筆者は「本当に退職して大学院へ進学するのか?」という大きな壁に当たりました。
専攻によっては、社会人として働きながら社会人大学院生として研究や学びを深めていくことが可能です。(専攻・大学院・研究室・指導教官によって社会人大学院生を受け入れてくれるかは様々だと思いますが、社会人大学院生はさまざまな専門領域に在籍しているのではないでしょうか)理系で仕事をしながら大学院に通っている友人は何人もいます。
社会人しながら大学院へ進学できないか検討
「本当に仕事を辞めなければならないのか」「お金はどうするのか」「自分のキャリアはどうするか」「仕事を辞めてまで大学院へ進学したいのか」など、様々なことが頭をよぎりました。情報収集をしながら、自分の将来のキャリアについて熟考しました。時には周囲の大事な人に相談したり、壁打ちとして色んな人に話を聞いてもらったり。
本当に社会人と大学院への進学の両立は難しいのか、さらに情報収集を重ねました。また、奨学金や学費について調べ、生活費の試算を行い、現実的に可能か検討しました。
社会人が仕事を辞めて大学院へ進学することを考えたとき、事前の情報収集は必須になります。お金にすごーく余裕がある人であれば、ノープランで仕事をパッと辞めて、大学院へ行くぞ、とキャリア変更ができるかもしれませんが、そんな人はごく一部かと思います。お金のこと、生活のこと、家族のことを考えつつ、自身のキャリアややりたいこととの兼ね合いや妥協点を探していきました。
チャンスがあれば、研究室訪問などで、その学問を学んでいる大学院生や先生から話を聞いてみるのもありだと思います。
モチベーション向上にもなりますし、自分がやりたいことなのかを見極めるチャンスになります。また、実際の生活リズムや拘束時間を聞き出し、自分の生活(仕事・家庭など)と両立できそうかについてもチェックしておく必要があるでしょう。
大学院・研究室選び
社会人を受け入れてくれるか
社会人経験者や社会人大学院生を目指す人は、大学院や研究室選びの時点から、現役生とは少し異なる視点で情報を集める必要があります。
「社会人(経験者)を受け入れてくれる研究室」を探す必要があります。大学院や専攻、研究室によっては「現役生しか受け入れない」「24時間研究にフルコミットする人でないと受け入れない」という方針のところもあります。そういった研究室に出願しても、受験対策や受験費用だけ無駄にかかってしまい、時間と機会と労力の損になってしまいます。
そのため、大学院説明会や研究室訪問を通して「社会人を受け入れてくれるか」という点をチェックしておく必要があります。
コアタイム、拘束時間
研究室に配属されると、自身の研究以外にも研究室のメンバーとしての仕事や活動が入ってきます。研究室によってはコアタイム(この時間は必ず研究室にいてね、という時間)が設定されている場合もあります。
コアタイムや研究室関連の業務(基本無償ボランティア)において、どの程度の拘束時間が発生し、自身のリソースをかける必要があるかについても確認しておくと良いと思います。
この点に関しても、研究室訪問で教員や学生に質問して、自分の生活と両立できそうかについて確認しておくのがおすすめです。筆者は院生に「コアタイムはありますか?」「毎日何時頃に帰っていますか?」「通学時間が一番長い人はどれくらいですか?」と質問し、自分の生活リズムと両立できそうか判断しました。
教員との相性
色々な人が言っていますが、教員との相性も重要な確認ポイントです。健康的で充実した大学院生活の2年間を過ごすためにも、パワハラ・アカハラっぽさがないか、自分との相性はよさそうか、求める指導をしてくれそうかなどを確認しておきましょう。
自分の場合は「社会人経験のある筆者」を尊重してくれる指導教員と出会えたことで、大学院生活はかなり快適でのびのびと研究に打ち込むことができています。
研究室訪問のやり方や、アポイントのメールの送り方についてはこちらの記事にまとめています。
筆者は心理学を専攻するために大学院選びをしました。心理系大学院へ進学したい人向けに、大学院の選び方のポイントはこちらの記事に詳細をまとめているので、心理学を専攻したい人はチェックしてみてください。
心理系大学院を探すときに重視したポイント【公認心理師・臨床心理士】|やま@心理系大学院生|note
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得られるもの
大学院へ進学して得られたものを考えてみます。
同じ分野に興味のある&専門知識のある仲間
まず一番大きいのが「仲間ができる」という点です。社会人をしながら一人で心理学の勉強をしていた時には得られなかった「心理学についていつまでもアツく語り合える仲間」と出会えたのは大きな財産だと考えています。研究室でコーヒーを飲んだりお菓子を食べたりしながら、同期や先輩と心理学について話をしている時間がなによりも楽しいです。
24時間365日、興味のあることに打ち込める環境
仕事を辞めて大学院へ進学したので、24時間365日、自分の好きなことに打ち込める環境が手に入りました。正直、寝ても覚めても自分の研究や専攻のことを考えています。
マルチタスクが苦手な自分にとって修士課程の2年間でどっぷり専門の勉強ができる環境を手に入れられたということは、本当にありがたいことです。
また、仕事と両立する必要がないため、睡眠時間の確保なども比較的容易だと感じています。毎日6~7.5時間程度は寝ています。(仕事と大学院の二足の草鞋になっていたら、必然的に睡眠時間を削る生活になり、健康を損ねていたと思います…)
睡眠時間を削らずに健康的に研究にコミットできるのも、仕事を辞めて大学院へ進学したメリットだと感じています。
勉強していても浮かない環境
古い友人と話していると「まだ勉強してるの?勉強好きだねぇ」と言われることが度々あります。大学院にいると、いくら勉強や研究をしていても浮かずに、むしろそれに没頭することができるのはありがたい環境です。ゼミや学会で成果を発表して周りから認めてもらえたり、コメントをもらえたりするのも、貴重な環境だと考えています。
充実の文献&図書館、大学のサービスが無料で使える
大学に在籍している人の特権として、文献サイトが複数無料で使えますし、図書館などのサービスも使いたい放題です。読みたい本は購入依頼をかけたら買ってもらえることが多いですし、勉強するための資源が充実しているという点ではかなりの強みだと考えています。生協で書籍を購入すると10%引きになるのもかなりありがたいです。(大学院在籍中に欲しい本は買ってしまおう…!という気持ちになります)
またキャリア支援や学生相談といったサービスも無料で使いたい放題です。筆者は自分の振り返りや自己理解促進のために、学生相談に月1くらいのペースで通っています。研究やキャリアの棚卸になるので、今後も継続して利用しようと思っています。(外部のカウンセリング機関で相談しようとすると1時間5000円~1万円以上するので、無料でカウンセリングが受けられる学生相談は破格のサービスです)
専門家としてのスキル
もちろん、専門家としての知識やスキルを学ぶことができています。さらに研究の進め方や論文指導など、様々なことを学ぶことができますし、それが自分の中に蓄積されているなという実感もあります。
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メリット
社会人経験者ならではの視点が持ち込める
自分は専攻が心理学ということもありますが、研究テーマに「社会人を経験したからこそ」の視点を持ち込めると思っています。実際の自分の研究動機に関しても、社会人経験がベースになっている部分もあります。これは、ずっとアカデミアにいる人ではなかなか着想を得るのが難しい視点でもあると思います(ストレートで大学院へ進学している人を責めているわけではありません)。
社会人スキルを活かすことができる
スケジュール管理、対人コミュニケーション、プレゼン、メール等のビジネスマナーなどは、社会人経験があることで培われている部分もあります。研究室もひとつの組織なので、その組織の中でうまく立ち回ったり、自分自身のスケジュール管理やタスク管理と言った面ではかなり社会人経験が役に立っていると思います。
自分の専攻の中にも社会人経験者が数名いるのですが、プレゼンの資料作成や話の上手さにおいて、スキルを活かして面白い発表をしている印象があります。(もちろん現役生の中にも発表がものすごく上手な人もいます)
相談先が多い
これは人や性格にもよると思いますが、私の場合はすでに社会でバリバリ働いたり、研究者として活躍している友人が何人もいるため、今後のキャリアや研究の相談に乗ってもらえる機会が多いです。
受験時は研究計画書の添削を研究者の友人に頼んだりしていました。また、面接対策は大学教員や人事で働いている友人にやってもらいました。
人を伝って「これについて研究したいなら私の知り合いにいるから紹介するよ~」と声をかけてもらえることもありました。いずれも、大学を出てストレートで進学していたら得られなかったチャンスなので、社会人経験をしてから大学院へ進むのも悪くないなと感じます。
研究できるありがたさ
1度仕事を辞め、自分で学費を払っているので「1分1秒でも無駄にしたくない」という熱意(もはや執念とも言うかもしれない)があります。授業中も集中して話を聞きますし、少しでも自分の学びになりそうなチャンスや機会に対して貪欲でいられるなと思っています。大学卒業後に、社会人になって「学生時代もっと真剣に勉強しておけばよかったなー」と何度も思いましたが、大学院生活においては、「全力で勉強と研究に打ち込んでいる」という実感があります。手に入れた環境へのありがたさや限られている時間を意識できるため、高いモチベーションで研究が継続できているように思います。
デメリット
周囲とのギャップ
大幅なキャリア変更となるため、周囲の「普通に仕事をしている」人とのギャップは生じるかと思います。それは生活リズムに出るかもしれませんし、「ご飯に行こう」「遊びに行こう」といった時のお店選びや予算の違い、1回の飲み会代で感じるかもしれません。結婚、出産、育児といったライフイベントで実感することもあるかもしれません。でも、それは普通に生きていても、何かしらの点でギャップを感じることがあると思うので、自分の中での折り合いのつけ方や自分のキャリアに対する考え方の問題でもあると考えています。
お金と時間はかかる
一番のデメリットはお金と時間がかかる、という点だと考えています。
仕事を辞めて修士課程に在籍するとなると、少なくとも「普通に仕事をしてたら得られた2年間の収入+学費」としての出費分はお金がかかります。
また、時間も受験勉強に加えて、大学院での研究やゼミ活動、授業や実習などに大きな時間を取られます。泊りがけの学会などもあるため、家庭がある人の場合は、家族の理解も必須になってくるでしょう。
また、社会人から大学院へ進学して感じた「よかったこと」「苦労したこと」をぶっちゃけベースで書いた記事はこちらです。この記事より突っ込んだ内容が知りたい人はチェックしてみてください。
お金事情
社会人が大学院を目指すときは、資金計画も重要なポイントとなります。
学費
学費や入学金は、大学によっては支払免除制度があるところがあります。仕事を辞めて収入状況や家計に大きな変化がある場合も、申請対象となる場合があります。
また、成績優秀者は特待生制度などで学費免除となることもあるでしょう。いずれにしろ、一度志望校に確認してみると良いと思います。
税金、社会保険料、年金
仕事を辞めた後も、住民税や社会保険料、国民年金といった出費が必要になってきます。まとまった出費となるので、事前にいくら必要となるかなどの試算をしておくと安心です。
奨学金
年齢制限や給付条件などもありますが、社会人経験者でも申請できる奨学金もあります。特にJASSOは奨学金を検討する時に最初に考える奨学金だと思われます。
大学院で実績を積み、奨学金の返済免除制度を狙うこともできます。
心理学を専攻している筆者のお金事情についての詳細はこちらのnoteにまとめています。
心理系大学院生のお金事情【支出・収入】|やま@心理系大学院生|note
また、奨学金情報については、こちらのサイトにまとまっているため、参考にしてみるといいかもしれません。
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まとめ
この記事を読んでくださった人の中には、「仕事を辞めて大学院へ進学しようか迷っている」「仕事と大学院の両立はできるのか」といった点で悩んでいる人もいるかと思います。
こちらのサイトには、社会人大学院生へのインタビュー記事がたくさん載っているので、自分の興味のある分野を専攻している先輩の話を読むことができるかもしれません。
また、社会人からの学び直しに関する雑誌や書籍も販売されています。
最新の情報やトレンドは雑誌から得るのもひとつの方法です。
少しでも今後のキャリア決定の参考になれば幸いです。
このサイトには、社会人から大学院へ進学した筆者の受験情報や勉強ノウハウをまとめています。
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